カオフラージュ
4
「あら、金ちゃんじゃない。何?」
愛華楼のゴミ捨て場で目を覚ました愛は自分を見下ろす、太った中年男に向かって言った。
「何? じゃないよ。嫁入り前の娘がみっともない」
あきれ顔の金太郎が答える。
「あれ、またやっちゃったんだ、私」
彼女は辺りを見回し、自分の状況を理解すると照れくさそうに笑った。
「ほら、立って」
彼女に手を差し伸べる金太郎。愛は差し出されたその太い腕に窮屈そうに巻かれた腕時計を見つめた――針は夜の八時半を指している。それから、「ヤバイ」彼女はそう叫びながら、立ち上がり、酔い潰れていたことが、嘘に思えるほどしっかりとした足取りで、その場から走り出していった。
「オイ」金太郎が叫んだ。「一体、どうしちゃったんだよ」
0コメント