新生喜劇~LA RENASCITA COMMEDIA~
「何だ、全然わからない」
私は嘆きに似た声をあげた。
「つまり、これは暗号ですね。恐らく、それらの番号は何かの文字に変換できるはずです。15と8の繰り返しがただの順列ではなく、文字っぽい並びのような感じがします」
天使が言った。
「そうなの? でもどうやって、変換するんだ?」
「その……総数が百十八個ある何かがあるのですよ」探偵のように、思案顔で、天使が私に答えた。「それは実際に存在するものです。そして、それには番号が振られているのですよ。ですから、それが何か分かれば、きっと番号に対応する文字も分かるのだと思います」
「百十八個ある……煩悩。違うな、あれは百八個だ……ダメだ、ちっとも思いつかない」
「私もです」
「ごめんなさい。これ以上は私にも見えないみたい」
どうやら、彼女の助けが借りられるのも、ここまでのようだった。とはいえ、おかげで、だいぶ駒を進めることができた。私たち二人は彼女に礼を言い、とりあえず、逆戻りツアーに戻ることにした。
情報屋のアパートへと戻ると、彼は留守だった。
「でも、よく考えたら、四つのキーワードが何かはわかったんだよな」
と私は言った。
「そうですね、そのキーワードたちが何を表しているのかについては依然謎ではありますが」
「今は、それがわかりそうな新たな手掛かりとなるあの数字の謎を解かなければならないわけだ。だったら、そういう数字に強い天使のお仲間とかはいないわけ?」
「そうか! そうですよね。どうも今日はうっかりしてばかりいますね。彼女に聞けばいいのですよ、ガブリエルさんに」
「ガブリエル?」
「そうですよ! さきほどお会いしたじゃないですか? 彼女は数字関係には詳しいのですよ」
「え? あの元霊能者……」
「違いますよ。バベルの図書館で」
「ああ、あの人……いや、天使さんが。ていうか、君たちの名前を聞くのはこれが初めてなんだけれど。そもそも、それ以前に俺ら名乗り合っていないんだけどさ」
「ええ? そうでしたか。いや、それは大変失礼いたしました。ここでは、名前を呼び合うということが、あまりありませんので。申し遅れましたが、私はラファロと申します」
「ええと、俺は……」
「ああ、大丈夫です。存じ上げていますので」
「そうなの?」
「現世からいらした方のお名前やその他の情報はすべての天使が把握しています」
「どうやって?」
「自然と……わかるのです」
「へえ、そうなんだ」
「それでは、行きますか」
「え? ああ、そうだな。帰ろう、『バベルの図書館』へ」
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