新生喜劇~LA RENASCITA COMMEDIA~
10
「それじゃ……」
私は驚きと安心の入り混じった、複雑な気持ちだった。
「私の名前はいろいろとあるのだけれど、中には「本の人」なんていうのもあるかな」少女は微笑みながら言った。「本当はおじさんたちの謎の答えはもうわかっているのだけれど、ただ教えても面白くないから、ヒントをあげることにするね」
「あの……あなたは本当に……いや、それよりなぜ、彼女の姿なのですか?」
「もちろん、おじさんを驚かせるためだよ。私はいたずらやゲームが大好きなの。だって、楽しいじゃない。それから、これ気に入ったからしばらくこのままの姿でいくから、この後も私のことはチコって呼んでね」
「はあ……」
「それじゃ、これからヒントを出すから、二人で頑張って解決してきてね。用意はいい?」
「あ、はい……」
「私はここへ迷い込む前におじさんが見ていた夢を探ってみたの」彼女が私に向かって言った。「そこには四つの場面があったでしょ。初めにおじさんと本物のチコちゃんが住んでいた大学時代のアパート近くの小高い丘の上。二つめは八木山ベニーランド。三つめは新婚旅行先の、ニューヨーク。そして、最後はおじさんの故郷である、石巻の日和山。そうでしょ?」
「はい」
「私ね、この四つの場面それぞれに今回の謎を解く、キーワードを一つずつ見つけたんだ。でも、それは教えないよ。自分たちで見つけてね。そんなに難しくないから。ここに来るまでにおじさんたちはそのキーワードにはもう会っているから。それじゃ、がんばってね。またあとでね、バイバイ」
そう言うと、一瞬で目の前から彼女の姿が消えた。
あまりの急展開に少し、面食らった私は言葉も出せずにいたが、天使に促され、とりあえず、公園から移動することにした。
「まさかあの方にこうも早く会えるとは。しかもあのようなお姿で……さすがに私も驚きました」
隣を歩く天使が言った。
「ああ……確かに」
ようやく落ち着きを取り戻した私が頷いた。
「ところで、私たちはすでに四つのキーワードに出会っているとあの方は仰っていました。何か心当たりはありますか?」
「いや、特に思いつくものはないなあ」
「私もです。それでは、私たちが今まで歩いてきた道を逆から辿って行くというのはどうでしょうか?」
「うん……それにしても、俺の夢の中に出てきた何かをここへ来るまでの間でもう一回見たってことだよな……あったかなあ、そんなもの……」
「とにかく生前、霊能者だったというあの女性のところへ戻ってみましょう。ひょっとしたら、何かわかるかもしれませんよ」
「そうだな。でも、彼女は俺たちが戻るなんてことは一言も言ってなかったぞ。霊視したなら、こうなる展開も見えていたんじゃないのか?」
「いや、そもそも彼女はあの方に直にお会いできるなんて言ってはいませんでしたよ。確かに、重要な人物に出会える場所がキャノンボール・パークであることは見えていたようですが」
「そうだったっけ? なんか霊視って言ったって、何もかもが見えるわけじゃないのかもな」
「けど、他に頼るものもありませんし」
「だな。それじゃ、駄目元でも今度はそのキーワードについて霊視してもらおう」
「ですね」
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