新生喜劇~LA RENASCITA COMMEDIA~
「ですから、そこに必要となるのが直観力ということになります。天才と呼ばれる方たちはこの直観力を鍛え上げているのです。一般に天才とは何かの専門家です。でも、そのジャンルについてただたくさんの知識を持っているだけでは本当の専門家とは言えません。そうなる為にはその中から有益な知識だけを選び取る力が必要となります。そこでその分野について、深く理解するための努力、試行錯誤がなされ、その中で、次第に脳は潜在的なミスを取り除くことを学んでいき、さらに五感も駆使して、その世界の視野を広げ、深く理解できるようになります。そうやって直観力が鍛え上げられるのです。そして、彼ら天才は無意識のうちにではありますが、この場所とアクセスが可能になるのです」
「なるほどね。この場所がどういうものなのかは分かったよ。じゃあ、そろそろなぜ俺がここにいるのか? その説明を始めてもらおうか」
「それは私には分かりません。あなたは今お話した、いわゆる天才のアクセスとは明らかに違う形でこちらにいらっしゃいました」
「明らかに違う?」
「はい。天才の方たちは無自覚で、意識のみのアクセスですが、あなたはこのように自覚されていて、ソウル(霊魂)の状態でここへといらっしゃいました」
「そうか……ソウルねえ……待てよ。仮に本当に夢から無意識の世界とやらに移動して来たのだとして、ということは俺の体はまだベッドの中ってことか?」
「そうですね。今はちょうど幽体離脱のような状態にあると言えます」
「幽体離脱って……この俺がまさかの生霊かよ……」
「これは非常に珍しいことです。残念ながら私にはなぜこのようなことが起こるのか、その理由については見当もつきません。それこそあの方なら分かるのでしょうが」
「けど、なぜだ? なぜ俺なんだ? ただ夢見てたってだけなのに……」
「ところで、その夢というのはどんな夢でしたか?」
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