カオフラージュ
29
日が暮れて辺りが暗くなってくると、愛たちの目の前で氷川丸のライトアップが点灯し始めた。船体のシルエットを縁取るように飾られた電球が闇の中で星座のように輝いている。
「姉は連続殺人犯の犠牲になったんです」
愛は言った。
「え」
男は驚きの表情をみせた。
「警察はなかなか捜査の進展状況や、その内容について教えてはくれなかったんですけど、ある時、私が事件のことを調べていることを知った、とある新聞社の記者の方が、事件に関する色々な情報を教えてくれたんです。それでわかったんですけど、この事件の犯人は必ず、被害者のそばにカードを残していくみたいなんです」
男の身体に緊張が走る。
「カ、カード?」
彼は震える声で言った。
「はい。アルファベットの文字が記された……なんて書かれていたのかはさすがに記者さんもわからなかったようですけど……」
「ああ――」
彼女の声を遮るように、彼は叫び声をあげ、突然、その場から走り出していった。
「え、どうしたの?」
彼女はとまどいの表情を見せながらも、すぐに後を追いかけた
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